お彼岸と“天上の花”

人々の生活に根ざした花

ヒガンバナヒガンバナ(彼岸花)は中国の揚子江流域原産。古くから日本に伝わる花で、稲作や仏教と同ルートで伝来したらしい。お彼岸の頃に咲くためこの名称になっ た。 一本の茎から放射状に、反り返った6枚の花びらと数本の長い雄蕊を持つ花が6輪前後咲く。花の時期には葉はなく、30センチほどすとんと伸びた茎の天辺に 真っ赤な花が躍る様子は、他の花とは趣を異にする。 ちなみにヒガンバナの葉は花が終わった後に現れる。冬から春にかけて鱗茎に栄養を蓄え、夏は地上から姿を消し、9月が近づくとまた茎を伸ばし出す。 花は白いもの(白花曼珠沙華)や、稀に黄色もある。 鱗茎(玉ねぎ状の球根)を始め花の全体に毒があり、ネズミなどの侵入を防ぐ目的で田畑のあぜ道によく植えられた。同様の理由で虫除けのために墓所に植えら れることも多く、独特な風貌と相俟って「死人花」「幽霊花」など不吉な異名が多い。反面「狐の提灯」などかわいらしいものもある。他の花に比べ異名が多い のも、人々の生活に根ざした花の証拠だろう。別名「曼珠沙華」は“天上の花”の意。「おめでたい事が起こる兆しに、天から赤い花が舞い降りてくる」という 仏教の経典による。 鱗茎の毒は強力で、長時間水に晒すと無くなるために 食糧危機の際には食されたこともあるが、毒抜きが足りないと天に召されることになってしまう。 毒は転じて薬となる。鱗茎から採れる生薬は「石蒜(セキサン)」といい、利尿・去痰作用がある。