第5回 剪定(3)

剪定3剪定作業は、時には高い場所で行います。これには、当然ながら危険が伴います。高い所が得意な人もいますが、最初は大抵怖いものです。人が最も恐怖を覚え る高さは、20~40m位(それ以上になると高さを実感出来なくなるんですね)だそうですが、その位まで登ることもあり得ます。
あるとび職の方に、「植木屋さんはスゲーなぁ」と言われました。「あんな所、俺は登れねぇよ」「え?でも、ビルの工事現場って、こんなもんじゃないで しょ?」「だってさぁ」と、とびの方は、眉間にしわを寄せます。「足場は自分で組んでるから、絶対の自信があるじゃない?木の枝なんざ、いつ折れるかわか んねぇもん」 そうなんです。木の枝は折れるんです。そりゃもう、ポッキリと。キャバクラの呼び込みじゃないんですから…って位なもんです。ですが、それを怖がってばか りいては、体に不必要な力が入って逆に危険です。そもそも、怖がっていたら仕事になりません。ですから、少しでも危険を回避する為に、道具を使ったりコツ を覚えたりします。
直接的に落下を防ぐ道具は、残念ながらありません。枝に乗らずに済む様に、脚立や梯子を使う位のものでしょう。落下してしまった後、地面まで落ちてしまわないよう、体を支えてくれる安全帯という物があります。これを腰に巻いて、そこから出て いるロープを太い枝に固定します。ロープの長さ分は落ちますが、せいぜい1~2mですみます。コツとしては、足を乗せる場所が重要です。やたら太い枝なら問題ないのですが、時には単一電池位の太さの枝に足をかけなければならない事もあります。普通に足を 乗せたら、大抵は折れてしまいますが、枝の分かれ目(股の部分)に、幹にすり付ける様に足をかけると意外と折れません。
しかし、体重をかけたら折れるかどうかを判断出来る、最も簡単で信頼できる方法は、結局の所経験です。かの宮本武蔵が無敵を誇った最大の要因は、「見切 り」の能力だったといいます。相手が強いと判断すると、決して勝負しなかったそうですが、それと同じです。「折れる」と思ったら、決して勝負しない事で す。
自分も、落ちました。物置の屋根からだったので安全帯等はなく、 背中から地面に着陸。自力で歩いて医者に行ったら、胸椎(背骨の上の方)を圧迫骨折してました。全治3カ月と言われたのに、1週間後には街を徘徊していた位なので、そう大した事はなかった様ですが、体は資本です。大事にしましょう。(説得力なし)

木に登らなければ、剪定が出来ないわけではありません。高所作業車や、脚立を使えば外側から作業が出来ます。あ まり枝を切り詰めたくない場合等には、有効です。また、いちいち木に登らなくてもよく、位置変えもカゴを機械仕掛けで移動するだけ。しかも外から木の形を 確認しながら作業が出来るので便利です。ただ、高所作業車は非常に値段が高く、リースにしても1日数万円から取られてしまうので、零細企業向きではありま せん。トラックの荷台にクレーンをつけた物(ユニックと呼ばれます)に、簡易なカゴを設置したタイプもありますが、 現在は行政系の仕事では、安全面の理由から使用が認められません。高枝切り鋏という物もあります。非常に便利なのですが、ただ、あれは細かい作業は苦手で すし、結構作業に時間を要します。結局、万能なものはなく、状況に合わせた道具の選択が必要なわけです。 他の作業でも同じですが、剪定作業で必要なのは、想像力です。出来上がりがイメージ出来ないと、いつまで経っても出来上がりません。想像力は、本来誰しも 持っているものです。「宝くじ当たったら何に使う?」「…さぁ、わかんないっすね」これは、想像する前にやめてしまっているだけです。精神論を語るつもり はありませんが、普段から物を見て考える練習は必要です。都心のコンクリート・ジャングル(古っ)にだって、草も木もあります。ほら、そこの街路樹1本か ら、何が見えますか? (2006年4月)

月間専門用語

[養生]  ようじょう

 病気や怪我を回復させる事ではない。ここでは、機械での草刈り作業によって飛散した土・草や石等で、周 囲の物や人が汚れたり壊れたり怪我をしたりしないよう、保護の為の処置をする事をいう。ブルーシートや板・網戸等を駆使して行う。場所によっては、大きな シートを物干し竿2本の間に張って、2人で竿を立てて持ち、作業をしているヤツの後をついて回ったりする。非効率的な様だが、ガラスを割ったりした日に は、1枚何万円もする事だってある。それ以上に信用問題だ。班長は怒られるし…。