八王子ラーメン横丁 でんでん

窓ガラスに貼付けられた切抜の“らーめん” の文字は、だんな様お手製。内装もだんな様がされたそうです。

窓ガラスに貼付けられた切抜の“らーめん” の文字は、だんな様お手製。内装もだんな様がされたそうです。

ラーメン作りの修行といえば、スープに使う動物系の獣臭の中、頑固オヤジに朝から晩までどなられつつ、毎晩一人居残って味をみる。勝手にそんなイメージを持っているのは、私だけでしょうか。
今回の「でんでん」のおかみさんは、明るく元気で世話好きなお母さん。そんなつらいイメージとは対極にあるような方でした。

 

でんでんラーメン、五〇〇円。チャーシューの厚みまでお見せできないのが残念です。これは絶対安い!気持ち程度載せた根生姜のせん切りは、さっぱり感を出すため。

でんでんラーメン、五〇〇円。チャーシューの厚みまでお見せできないのが残念です。これは絶対安い!気持ち程度載せた根生姜のせん切りは、さっぱり感を出すため。

「とにかく人に話を聞くと行きたくなっちゃうのね」。
お台場、代官山、森ビルと、話題のスポットにはすぐ出かけるというおかみさん。
その勢いはラーメンについても同じで、町田、立川、府中を始め都心や郊外まで噂に聞いたお店はすぐに出かけます。

 

そもそもラーメン店を始めた理由が「何かお店をやろうと思った時にちょうど流行ってたもんだから」。
そんなミーハーな理由で、と変なレッテルを貼るなら、こちらが短絡的。
「何でこんな手が掛かって儲からないこと始めちゃったのか」と笑いつつも、仕事中は一部の無駄なく動き回り、食べ歩きの成果を生かした本当に手の掛かるラーメン作りをされています。
おしゃべりの合間に。…っていうことではないんですが。

 

和調の内装もだんな様の手によるそうで、店内は女性店長のお店らしくきれいに整理されています

和調の内装もだんな様の手によるそうで、店内は女性店長のお店らしくきれいに整理されています

おかみさんは地元の方。
今お店がある場所で、お父様が三〇年間電気屋さんをなさっていたそうで、そこからお名前ももらいました。
ラーメン店開業を思い立ち、お客様に納得して出せるものが作れるまで五、六年はひたすら研究されたそうです。五、六年と一口に言っても、すごいことです。
なんとか形になったと感じ、開店して今年で十三年になるそうですが、それでも最初の十年は毎日が試行錯誤の繰り返し。今も、もっともっといいものをとの思いは、常にあるそうです。

 

とても庶民的な店内。自分の家のようにくつろげます。

とても庶民的な店内。自分の家のようにくつろげます。

不思議なもので、チャーシューが少ないと思う時に限ってチャーシュー麺ばかり。ご飯が少なくなってくるとカレーばかりが出るそうです。
日々の生活も同じで、お母様のご容態が悪くなった頃に息子さんも怪我をなさるなど、お店を開いてからの十三年間、ご家庭との両立は並大抵でない忙しさだったようです。

 

お話があまりに大変そうなので「やめようと思われたことはないのですか」と、思わず聞いてしまいました。 
「一度やろうと思って始めたことだから、そこはきちんとね」。 
おかみさんは、自分でやろうと決めた事には何事にも全力投球の方なのです。

おかみさんの一番のこだわりは、麺・スープ・具のバランス。
特にスープが命、絶対にごまかしが効かないといいます。
仕込みは深夜まで続きます。開店当初はお一人でやっていたそうですが、最近はだんな様も手伝ってくださって、麺について話し合いながらご一緒に仕込みをされるそうです。今もお客さんが増えつつあるというお話も、おかみさんの人柄とラーメン作りにかける熱心さを思えば頷けます。

「時間も短いしそんなに利益が出ないのよ」。
でも、「ラーメンは万人向けの食べ物だから高くしたくないの」。
人が大好きなおかみさんが、お客さんのことを考えて全力投球で作ったラーメン、おいしくないはずがありません。

おかみさんお勧めは、カレーライスとラーメンのセット。
ラーメン店のカレーと言うと、片手間に作ったように思われるのが残念、というおかみさんのカレーは、玉葱を1時間しっかり炒め、ラーメンスープで半日以上煮込み、一晩寝かせてコクを出した本格派。
洋食屋さんのカレーとは違う、中華風のカレーです。

 

一口メモ
・麺 中細ストレート麺
・具 チャーシュー、メンマ、
ノリ、玉葱みじん切り、根生姜の極細せん切り少々
直径一〇センチ超のチャーシューは肩ロース製。煮崩れる限界まで柔らかく煮込む。
メンマも手作り、しっかり塩出しした後に一つ一つ手で割き、三日間かけて作り上げる。
・スープ ゲンコツ、鶏ガラ、昆布、リンゴ、玉葱、カツオ節、他
カツオ節は厚削りの良いもの。醤油ダレには全て天然素材を使用。
二〇種類以上使用する素材は、下味をつけるなど一手間かけて大事に味をひきだす。
・系 列 特になし。独立店。
・一人当りコスト 500円強
箸を持つやいなや「麺がおいしいでしょ?」とおかみさん。一見ごく普通の麺にも、おかみさんのこだわりが。
麺も、スープを吸いすぎると食べ終わる頃には伸びておいしくない。でんでんの麺は、十分にスープの味がしみ、しかも最後まで歯ごたえある麺です。

 

でんでん
場 所 八王子市子安町1-37-6(JR・京王八王子駅歩8分)
現地周辺地図
営業時間 11:30~15:00
休業日 火曜日・祝日

 

※この記事は平成17年10月に書かれたものです。