たまの探訪記 八王子車人形

 

まるで生きているかのような表情も、人形の顔の動き自体を自由に操れることによる。

まるで生きているかのような表情も、人形の顔の動き自体を自由に操れることによる。

八王子市が後世に伝えていかなければならない、貴重な財産があります。 
西川古柳座の伝える「八王子車人形」も、そんな八王子にとっての貴重な財産の一つです。 
国の選択無形民俗文化財であり、また都の指定無形文化財でもあります。 
一つ残念な事は、八王子市民にはあまり名前が知られていないように見受けられる点です。

 

生写朝顔話は、九州の国家老の娘深雪と若侍阿曽次郎の一途ながらもすれ違う恋心が綴られる。

生写朝顔話は、九州の国家老の娘深雪と若侍阿曽次郎の一途ながらもすれ違う恋心が綴られる。

車人形とは、ろくろ車という、前に二個、後に一個車輪がついた箱型の車に腰掛けて、一人の人形遣いが一体の人形を操る人形芝居。江戸時代末期に考案されました。 
それまでにあった江戸系の三人遣いの人形芝居を合理化したもので、これによって簡易な舞台で少人数での公演が可能となりました。

 

 

三番叟は、天下泰平、五穀豊穣を祈るめでたい演目。

三番叟は、天下泰平、五穀豊穣を祈るめでたい演目。

人形の足が直接舞台を踏むので、力強い演技やテンポの速い演目もでき、また、舞台を選ばないので他の芸能との共演も可能です。 
近年クラシックバレエやフラメンコ等、幅広い分野とのコラボレーションも行われています。

 

「八王子車人形 西川古柳座」お稽古場。人形や衣装も収納されています。

「八王子車人形 西川古柳座」お稽古場。人形や衣装も収納されています。

五代目家元 西川古柳氏ご本人が会ってくださるというので、楽しみに出かけました。 
文化財として高い評価を受けている車人形の家元、少し緊張してお待ちしていました。 
「お待たせいたしましたー」 現れた家元は、目が合うとニコッと笑顔を作られました。まるで子供のような人のいい笑顔。 
専門的な難しい言葉は使わず、分かりやすく丁寧に説明してくださいました。

 

織田・豊臣統治下の安土桃山時代(1573~1600年)、ポルトガルやスペインの文化の影響をうけ安土桃山文化が生まれる。
その後、徳川家康が幕府を開き、明治時代が始まるまでの268年間、江戸時代(1600~1868年)が続く。江戸時代には200年以上続いた鎖国時代があり、それ以前に流入した他国文化を発展させる形で日本固有の江戸文化が開花した。歌舞伎や浮世絵、俳句・川柳、楽焼・有田焼などもこの頃に創始されている。
車人形の原型である、人形浄瑠璃「文楽」も、この時代に始められた。三人遣いの人形芝居で、舞台も大掛りで多くの人手を要する。これを発展させ、ろくろ車による人形の一人遣いを可能にし、舞台装置もコンパクト化して力強くリズミカルな動きを出せるようにしたものが、車人形である。八王子車人形は、現・埼玉県飯能市に生まれた山岸柳吉(初代西川古柳)が、19世紀末に考案した。その弟子二代目古柳の時に芸能研究家坪内逍遥らに認められ、伝統芸能として評価を確かなものにした。
現在の五代目西川古柳氏は二代目のご子孫で、国内はもちろん、世界各国で車人形の上演を行っている。

 

 

最近製作された鎧の衣装。赤・青・黄色に金糸の刺繍と、華やかで美しい。

最近製作された鎧の衣装。赤・青・黄色に金糸の刺繍と、華やかで美しい。

西川古柳座は、昭和五一年の四代目在籍時のソ連・アメリカ公演を皮切りに、ヨーロッパ・中南米・アジア諸国にて精力的に人形指導や公演を行ってきました。 
その甲斐あって、都文化功労賞や文部大臣文化功労賞、芸術祭賞、民族衣装伝統文化賞など多くの賞を受賞しています。 
また前述の通り、国の選択無形民俗文化財、都の指定無形文化財にも指定されています。

 

 

収蔵庫に収められた首(かしら)は120体程、その内90体は江戸末期のもの。良好な状態で保存するため、室内は一定の温度に保たれている。

収蔵庫に収められた首(かしら)は120体程、その内90体は江戸末期のもの。良好な状態で保存するため、室内は一定の温度に保たれている。

家元に今後のご予定を伺ってみました。「これから夏にかけて予定が空いてくるんですよね」そうおっしゃいつつも、四月神楽坂/五月半ば町田/五月末徳島/八月長野と、日本各地を飛び回る忙しさ。 
七月七日には八王子市のいちょうホールで、講談師※神田すみれさんとのコラボレーションもあります。 
※講談 : 寄席演芸の一つで、前に置いた釈台を張り扇などで打ちながら調子をつけて軍談などを読む話芸。

 

江戸時代末期から受継がれている年代物の鎧。生地自体が無地で、黒や柿色・紺色と地味な色合いだが、150年という風格を感じさせてくれる。新しいものとのデザインの違いにも注目。

江戸時代末期から受継がれている年代物の鎧。生地自体が無地で、黒や柿色・紺色と地味な色合いだが、150年という風格を感じさせてくれる。新しいものとのデザインの違いにも注目。

今後の予定を伺っていても、車人形単独の公演はもちろんですが、他分野の芸能とのコラボレーションが多いのに気がつきます。 
「守るだけでは良くないと思うんです」と家元はおっしゃいます。
これまで続いてきた車人形の伝統を守る事はもちろん必要です。そして、車人形について正しく理解した上で、
「新鮮なもの、その時代に合ったものを提供していく事が必要だと思うんですよ」

新しいものを取入れることで、今までとはまた違った世界も開けるのだそうです。

 

西川古柳座を見学しよう!
稽古場に収められた首は約120体、衣装は200着ほど。近くで見るとなおさら、その美しさと精巧さがよく分かります。
事前に電話連絡していただくと、お手すきの際には家元自らにご案内していただけます。家元は、芸術家らしいとても柔らかい雰囲気をお持ちの方。でも、一旦車人形の話となると、熱意あるお話が伺えます。

 

車人形は、他にも、奥多摩町川野地区に伝承された川野車人形、埼玉県入間郡三芳町大字竹間沢の竹間沢車人形が現存します。 
そんな中でも、西川古柳座の活動は精力的で、高い評価も得ています。郷土の誇る伝統芸能、これまでご存知なかったという方もぜひ見学に訪れてみてください。

 

東京都無形文化財 八王子車人形
西川古柳座
場所 東京都八王子市下恩方町1566
TEL 042-652-1222
交通 ・JR八王子駅北口・京王線京王八王子駅より、
陣馬高原下/大久保行各バス[松竹」停下車徒歩3分
・JR・京王線各高尾駅北口より、
恩方車庫/宝生団地行各バス「河原宿大橋」停下車徒歩10分

 

※この記事は平成18年4月に書かれたものです。