歳をとったせいか、
体に良いことをしようと考えることが増えました。
その一つが、「一日十回感動(感謝)する」ことです。
ところが、この十回というのがとても大変です。
生来、横着(おうちゃく)な私は、
そのうちの五回は、毎日同じものと定めました。
そのヒントを、工藤直子さんの二つの詩から得ています。
◇はじめて
「あした」というじかんは
はじめて会うじかんだから
あしたになったら ちゃんと
あしたに
「こんにちは はじめまして」
と いおう
◇こんにちは
うえむいて あ、そら
― こんにちは
したむいて お、じめん
― こんにちは
みぎをみて ほ、風がふく
― こんにちは
ひだりをみて わ、いいにおい
― こんにちは
いろんなものが
わたしのまわりで
おたがいに
「こんにちは」と いっている
これが「いる」ってことかな
これが「いきる」ってことかな
そうです、「こんにちは」を「ありがとう」に変えて、
感謝しています。
「朝起きて窓を開けた時」、「空を見上げた時」、
「地面を踏みしめた時」、「風を感じた時」
そして「いいにおいがした時」の五つです。
英語でも、
Count your blessings(頂いた恵みを数える)と言い、
辛(つら)さ、淋(さび)しさ、喜び、悲しみのすべてを
恵みとして数え、感謝することだそうです。
私自身は正直なところ、辛さや、淋しさに対して
感謝するところまでは、できていません。
渡辺和子さん(「おかれた場所で咲きなさい」や
「面倒だから、しよう」等の
著者:ノートルダム清心学園理事長)の
著書「忘れかけていた大切なこと」の中に
次のような一文があります(以下、一部抜粋)。
『その日の出来事の中から
三つの「感謝すべき」ことを手帳に書く習慣を実行している。
大きなことでなくていいのだ。
小さなこと、
例えば、取り入れた洗濯物がパリッと乾いていたこと、
混んでいた電車の中で、
運よく前の席が空いて座れたこと、
これら、ごく平凡なことでいいのだ。
しかしながら、この小さな習慣は、私を前よりも
幸せにしてくれている。
なぜなら、いままで”当たり前”と思っていたようなことが、
当たり前でなくて“有り難い”、つまり、有ることが難しい、
したがって感謝すべきことだと思えるように
なったからである。
一方、私たちは、何と多くのことに、
感謝しないままで生きているかということに、
気づかされるようにもなった。 ・・・・(中略)・・・・
幸せを他人(ひと)任せにしないために、
どんな状況の中においても自分を幸せにするためには、
工夫が要る。努力しないといけない。
そしてそのために、「恵みを数える」小さな習慣は、
立派に一役買うことが出来るのだ。』
また、武者小路実篤著『幸福について』の中にも、
「幸福は運命から与えられるよりも、
寧(むし)ろ努力で獲得するほうが多い。」
と書かれていますし、
かのリンカーン(第16代アメリカ大統領)にも、
次の言葉があります。
「およそ、人は、幸福になろうとする決心の強さに応じて
幸福になれるものだ」
幸福になるには、「そうなるように努める」ことが
必要なのだと感じています。
少し話がはずれますが、山田洋次監督の
「男はつらいよ・寅次郎物語」の中にこんなセリフがあります。
満 男 「人間は何のために生きてるのかな」
寅次郎 「何て言うかな、ほら、
あー生まれて来てよかったなって思うことが
何べんかあるだろう、
そのために人間生きてんじゃねえのか」
さて、「今日は、残りの五つの感謝を何にしましょうか」
参与 大隅 晃