“高齢者の所在不明”報道に接して

いま、100歳以上の高齢者の所在確認が全国的に実施されている。
連日、テレビや新聞でも報道され、
所在未確認者が続出していること、
永年、書面だけで確認していた慣行が浮き彫りになった。
そういえば最近、我が家にも、
実家の市役所から珍しいものが送られてきた。

 26年前に亡くなった父が所有していた田畑の一部が、
道路拡張計画の中に含まれているとのことで、
売却する必要が出てきたのだ。
すでに財産は、すべて長男が相続しているので、
末っ子の私には全く関係ない話のはずなのだが、
なぜか26年前に父から兄へと名義変更する際に、
田んぼの一部が隣の市(当時は町)に属していたことが
見落とされていたらしい。

それで、わずかな面積ではあるものの、いまになって再度、
私たち兄弟の財産放棄の同意書が必要になったのだという。
そんなわけで、地元市役所から「相続関係図」という、
これまで見たこともない書類が送られてきたわけだ。

図には、父母を筆頭に8人の子供と15人の孫、
さらに20人のひ孫の名前や生年月日、
連れ合いとその子供までの繋がりが、実に細かく記されていて、
把握の完璧さに圧倒された。

実家はもともと村だったが、
昭和30年代に町村合併によって町となり、
つい最近、市に合併された。
その長い時間の中で、
他県に転出した者についてもキチンと管理されていることに、
役場の戸籍管理の素晴らしさを見た思いがした。

しかし、道路拡張で書類の再調整が必要になったのも、
もとはといえば、田んぼの一部が隣の市に属していたことが、
うっかり見落とされていたのが原因だ。

高齢者の所在確認調査の報道を見ていると、
役所の言い分は、高齢者の身分に関する届け出がない限り、
書面がすべてだというように聞こえてしまう。

これらの問題は、
書面第一主義の悪しき慣行が役所に生き続けていたことを知らしめ、
書面だけに頼ることの怖さを、
私たちに教えてくれたようにさえ思う。

監査役 千葉 久公

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