今も大切にしている旅立った丸紅の先輩のお別れ状がある。
ご子息が最後に、
「父が生前、書き残していたものです。
遺志に従い原文そのままです」
との挨拶があり
葬儀のお礼状のなかに添えられていた。
先輩らしいウィットに富んだ心温まるお別れ状に、
懐かしく往時を偲んだ。
原文
拝啓 時下ますますご清栄のことと拝察申し上げます。
さて、小生はさる2月23日午前3時15分、あの世に旅たちました。
ひとことお別れのご挨拶と思いながらも叶わず、
些か残念でしたが無事到着いたしました。
こちらでは、血糖値や肝機能を心配する必要が無く
快適な日々でありますが、
父や母の目がありますので、酒の方は止む無く程々にしております。
いずれ貴方様もお越しになられるのですが、
小生は先に来ている方との再会を楽しんでおりますので、
貴方様はもう少しごゆっくりしていて下さい。
生前は本当にお世話になり有難うございました。
心より感謝申し上げます。
尚、頂戴いたしましたご芳志は
その一部を医療研究機関に寄付させて頂きますので、
何卒ご了承賜りますようお願い申し上げます。
先ずは御礼方々ご挨拶申し上げます。 敬具
新住所 天国市日本区幸町1丁目1番地
吉村 晃
同じ中央線だったのでよく飲みに連れて行ってもらい、
議論したのが懐かしい思い出となっている。
相容れない考え方もありよく衝突もしたが、
生意気な若造の意見をよく聞いていただいたおおらかな先輩だった。
この粋で爽やかな、
お別れのメッセージとともに今も鮮明に心に残っている。
社長付(開発統括) 岩松寛道