いちご摘み

我が家の毎年の恒例行事のひとつに「いちご摘み」がある。

「いちご狩り」では何処か野蛮な印象があり、
「いちご摘み」といった方がフィットしていて趣がある。

7、8年前から、必ずこの寒い時期に妻と二人でドライブがてらに奈良県の明日香村まで足を延ばしている。目当ての品種は「あすかルビー」。宝石のルビーのように真っ赤ないちごで「アスカウェイブ」と「女峰」を交配し、奈良県で2000年に品種登録されたことから「あすかルビー」と命名された。比較的大粒で甘く、程よく酸味がきいている。シーズンとしては12月から4月頃までなので、2月はちょうど真ん中の時期。まだ熟していない青い実も散見する。ビニールハウスの入り口横にかなり高齢のご夫婦が仲むつまじくパイプ椅子に腰かけて私たちにやさしく微笑みかけてくれる。日に焼けた肌から白い歯がこぼれる。中へ入ると入り口横に4、50代くらいのご夫婦?が受付をしていた。おそらく、パイプ椅子のご夫婦の息子さん夫婦であろう。親から子へ。子から孫へ。代々受け継がれてきた農地を汗水流して耕し、私たちに食の幸福を与えて下さっていることに感謝。

いちごはほかの品種もいくつか試したが、この「あすかルビー」ほど美味しいものにまだ出会ったことがない。いちごの食べ方としては葉の部分をちぎり、ちぎった方から細い先に向かって食べるのが正しいらしい。甘みの強い先っぽからでは最後に水臭くなるからだ。しかし、この場合細い方を指でつまむため、滑って落っことしやすくなる。なので、葉の部分をつまんで細い方からそのまま口に入れる方が食べやすく自然だから、いつもこのスタイルをとっている。

悩ましいのは、入園料1,500円の元を取ろうとたくさん食べたいが為昼食抜きで挑むのだが、定番コースは帰り道の国道沿いにある中華そば「天下一品」に立ち寄り、ラーメンランチを食すことである。天下一品ファンである妻の希望で、いつしか「いちご食べ放題」~「天下一品」という流れになってしまった。果物と炭水化物は別腹らしい。「やっぱり天下一品はおいしいなぁ」と言い、幸せそうにこってりラーメンをすする妻を上目遣いに見やりながら、いちごで満たされた腹に無理やりラーメンを流し込む。近年は心得たもので、いちごはラーメン分を考慮し、腹八分目に抑えるようにしている。

建物総合事業本部 山畑 道憲