冬の初め、母が盆栽をひとつ家へ持ち帰りました。
紺色の器に太い枝が3本突き刺さっているだけのそれは、
桜が咲くのだという。
桜の芽がないどころか、花を付けられそうな枝も見えないその姿に
半信半疑のまま、日に当て、寒さを防ぎ3月を迎えました。
盆栽は「温かいところへ置いてあげよう」と、部屋の出窓部分に
置かれてから、温かく日光を浴びられる状況を確認して安心したのか、
気をつけて見る人がいなくなり、程なく放置されました。
寒すぎず、日にあたっているとはいえ、
水を与えられることの無い土はひび割れをおこした惨状で、
とても花を咲かせられるような状態には見えませんでした。
3月に入り、ふと思い出して様子を伺うと、
周りの状態はとても悪く見えましたが、
3本の枝?(幹)を見てみると、しっかりと根を張り、
木の内には力があるように感じられました。
そこで、頑張って生きているのだろうと思い、割れた土に水をやり、
多少ひとの目の届くところへと引越しをさせましたが、
木の変化は小さなもので、なかなか結果を感じさせてくれない
ただの枝が突き出た盆栽は面白くなく、
またしても興味を失ってしまいました。
そして、ふと気がついて盆栽に目をやると…
すでに花が咲いてしまっていました。
せっかくの盆栽の桜でしたが、
つぼみの生長や開花への期待を感じることなく、
咲いている花を見るばかり。
育てる楽しみを感じることが出来なかったのは残念でしたが、
今、うす紅色の桜の花は余震や停電など不安の続く心に
ほっと一息つく余裕や、希望のこころを届けてくれています。
これから桜のほかにも、たくさんの草花が成長し、
希望の花を咲かせていくでしょう。
道端の蒲公英にも、働き出すアリの列にも、
力強く生きていく自然の力を感じるでしょう。
津波によって何もなくなったような東北・関東の地にも、
必ず自然はよみがえります。
たくましい自然の力に負けないで、
みんなで震災を乗り越えていきましょう。
すべての人の【生きる力】を信じています。
建物総合事業本部 山田 真紀