努力の天才Fとの再会 ①

中学時代の同級生であるF君と10年ぶりに呑みに行く機会があった。

久々の再開を果たして昔話を肴にとても楽しい時間を過ごした。聞けばFくんは某大学病院で医師として活躍をしているという。普通なら驚くところだがF君の事なのであまり驚きはしなかった。

中学時代、誰よりも真面目だった僕(笑)は授業もろくに聞かず部活も幽霊部員、テスト期間中であろうと関係なく仲間と遊びまわり、周りの大人達に大変迷惑をかけていた。

そんなある日、期末試験の再テストをどうしても受けなければならなくなり、休日に登校した日があった。該当者は僕とF君の2名。僕はサボったから当然なのだが、学年トップの成績をいつも出していたF君がそこに居たのはどうしても解せなかった。聞けばF君はテスト期間中ほぼ寝ずに勉強をしていた結果、体調を崩してテストを受けられなかったそうだ。そんなF君の努力に心を動かされた先生が、特別にテストを受けさせてあげようとしてくれて、F君の復帰に合わせて再テストの機会をつくってくれたのだった。そしてテストを受けなかったもう一名、つまり僕にも同じようにしてくれた。ご察しの通り僕のテストの結果は散々で、下から数えてすぐ見つかるような結果だったが、F君はしっかりとその時もトップの成績を修めた。

当時の僕は勉強なんか真面目にやる事はダサいという大いに間違った考えをもっていたのだが、その時のF君の事は心からすごいと思い、素直に尊敬した。テストの時期は授業が早く終わるので、その時間で遊びほうけていた自分に対し、寝る間も惜しんで勉強してしっかりと結果を出しているF君の事はとても印象に残っていた。

F君は部活も熱心で、テニス部に所属をしていた。運動神経はもともとあまり良いほうではなかったらしいが毎日一生懸命練習している姿は今でも目にやきついている。

そのF君が突然陸上部に混ざって練習をしていたので

「なんで陸上部と走ってるの?」

と質問したら

「顧問の先生にお前は走ることが人より苦手だって言われたから、しばらく陸上部で修行して走れるようになってからテニスを再開するんだ」

と答えてくれた。

僕はどちらかといえば器用な方だったので努力しないでもある程度の事は人より出来、飽きっぽいのですぐ違うことを始めて楽しんでの繰り返しだった。したがって、苦手な事はそんなにないし、苦手な事は放置して得意な事ばかりやる。そんな生き方をしていたので当時の僕はFくんの行動が理解出来なかった。

今思えば中学時代のF君は正しい生き方の見本のように思えるし、今の自分があるのも当時のF君を見ていたおかげだと思う。

そんなF君から先日改めて連絡をもらい、休日にランチする事になった。

つづく

建物総合事業本部 営業部 課長 白柳 広賢