原発性小人症

当たり前のように暮らしているが、決して当たり前ではない。

五体満足な体に産んでくださった両親に、神様に感謝。

あるテレビ番組を観て、あらためてそんな幸せを噛みしめた。

原発性小人症。

300万人に一人。世界で100名ほどの症例しかない難病である。

カナダのオンタリオ州に暮らす女子高生、ケナディ・ジャーディン・ブロムリーは2003年に体重900gで生まれた。13歳で身長101㎝、体重11キロ。長生きできたとしても40歳位までと言われている。頭と体のバランスが保たれたままサイズダウンした体格となる。視力が弱く、脱臼や骨折しやすい。また、血管が細いため動脈瘤には常に警戒が必要になる。脳の動脈瘤が破裂すればあの世行きという、死と隣り合わせの生活を余儀なくされる。定期健康診断の結果では確実に病が進行しているという。

この難病の原因は親の遺伝子にあるとされている。ケナディの両親はたまたま二人とも極めてまれな遺伝子を持っていたがために、25%の確率で原発性小人症の赤ちゃん、ケナディが生まれてきた。

番組では、温かく見守る両親のもと明るくすくすく育っているケナディの日常生活が映し出される。彼女に難病という苦悩は微塵も感じられない。走ることやダンスが出来るまでに成長した普通の高校生、ケナディ。高校では友人もできた。食堂で他のみんなより多めの食事をもくもくと食べている彼女に「たくさん食べるのね、ケナディ」と、微笑みかける友人。

優しい家族に少しでも恩返ししたい気持ちがお母さんのお手伝いという行動に現れる。台に乗っかって台所で食器を洗う。近くのファーストフード店?に食事を買いに一人で出かける。生まれて初めてのお使いに番組としてもやはり心配なので、彼女に内緒でボディガードをつける。迷いながら何とか目的のお店を見つけるやいなやうれしさのあまり駆け出す。買い物を終え、自宅近くまで帰ってきた。家の前で心配そうに立っている母親を見つけるとまた走り出す(何も走らなくていいのに)。案の定、食品の入った紙袋の底が抜けて路上に中身が散乱する。ケナディの靴にもケチャップか何かがべっとりとついてしまう。普通の高校生なら何でもないことがケナディにとっては大変なこと。

「こんなことすら満足にできない」

負けず嫌いのケナディは自分の情けなさに母親に抱きつきおいおい泣いた。観ていた私もこのシーンでは目頭が熱くなった。

ケナディの母親は再婚相手とすでに一緒に暮らしているが、結婚式はまだだった。ケナディも同席して挙行されたセレモニーでは、粋な計らいがあった。指輪の交換で、小さな純白のウエディングドレスに身を包んだケナディの指にも素敵な結婚指輪が。この上ない幸せのケナディは感極まって目を潤ませる。もちろん、恐らくケナディには今後経験することがないであろう結婚式を体験させてあげようという母親のやさしさからだった。ケナディの涙は純粋なうれし涙であり、自身の宿命を恨む気持ちなど全くないと信じたい。常に死と隣り合わせで長く生きることができないのだが、ケナディ自身、そのような大変な難病に罹患しているということを最期まで知らず、周囲の愛情を一身に受けながら精いっぱい生き切ってほしい。心からそう願った。

建物総合事業本部 山畑 道憲