「ありがとう」への感謝

 吉本興業東京本部では、新型コロナウィルスの影響で、周りの人たちは交代でテレワークになった。私は出勤し、郵便や宅急便の受け取りや担当者へ書類をスキャンしてメールを送る等の作業を行っている。細々とした雑務が多く、いつも他の人がやってくれているのだと改めて感じている。

 お客様からのクレーム電話の対応に加えて、スタッフから不満をぶつけられることもあり、だんだん疲れが蓄積していった。
 そんな中、苦情対応の中で非常に心ない言葉を浴びせられしまった。今までの疲れもあって、急に耐えられなくなってしまった。さすがに傷ついたし、心も折れた。
 ちょうどその日に芸人のRさんが事務所に訪ねてきた。Rさんは、時折会社のイベント物販の手伝いをしてくれている芸人さんだ。
「会社にくるのはすごく久しぶりだけど、どうしてもお礼を直接言いたくて寄りました」と。
Rさんに会うのも久しぶりだった。新型コロナウィルスの影響で、会う機会もなかった。

 Rさんがわざわざ言いに来てくれたお礼は、以前私がRさんにしてあげた些細なことに対してだった。確定申告をする時に手伝ったのだ。
 Rさんの所得は出演料なので、引かれている源泉所得税が高い。そのため、確定申告をしたら、還付金が高額になった。その還付金が入金になったそうだ。
Rさんから、「あれがなければ、収入がない今、餓死していました」と感謝された。

 もともとはRさんがもらうべき還付金なので、私が感謝されるのも違う気もするが、私がしたほんの些細なことで、わざわざお礼を言いに来てくれたことが嬉しかった。あまりにも疲れて辛い気持ちになっていた中で、感謝してくれる人もいたことに救われた。
 お礼は大事なことだとつくづく感じ、「ありがとう」と言ってくれたことに感謝した。

管理本部 課長代理 K. T.