“終着駅”

島国であるわが国には、「日本最北端の稚内」「本州最南端の串本」といった“最果ての地”が多くあり、絶景スポットとして人気の観光地となっています。とはいえ、都心に住んでいると、そうした最果ての地には、なかなか訪問する機会がありません。

同じように、旅心をくすぐるのが、鉄道の終着駅。「その先に、もう線路は続いていない……」という一点の事実が、旅情をとても刺激します。
ただ、都心に暮らしていると、JRはもちろん、私鉄も各社との乗り入れ運転が多く、長大な路線距離があるため、終着駅に巡り合うことが難しいと思いませんか?

ところが! 関西の私鉄の場合、けっこう終着駅に遭遇します。
私は現在、関西私鉄の雄・阪急電鉄の沿線に住んでいるのですが、阪急だけでも、「北千里駅」(大阪府吹田市)、「嵐山駅」(京都市)、「箕面駅」(大阪府箕面市)、阪急と直通する能勢電鉄の「妙見口駅」(大阪府豊能郡)などなど……、いくつも思い浮かびます。

いずれの駅も、阪急の始点である「大阪梅田駅」から小1時間程度。繁華な観光地や、巨大なベッドタウンを抱える駅であり、“終着駅”という寂しげな印象とはほど遠いのですが、私はそうした駅を、“プチ最果ての駅”と勝手に呼んでおり、休日、たまに訪れて、旅心を“プチ補充”しています(笑)。

北千里駅は、阪急千里線の終着駅。

1960年代に開発された、日本最初のニュータウン「千里ニュータウン」の玄関口です。千里ニュータウンは都心へのアクセスの良さや環境の良さもあって、各地で問題となっている、郊外型大規模住宅街の“過疎化”とは無縁。ベッドタウンとして今も人気のエリアです。

嵐山駅は、いわずとしれた京都の人気観光スポット、名勝「嵐山」の最寄り駅。

箕面駅がある箕面市は、関西屈指の高級住宅街として有名です。余談ですが、20年ほど前、私もこの地に暮らしており(住んでいたのは、安アパートでしたが……)、とても愛着があります。

妙見口は、「能勢妙見山」の最寄り駅。

能勢妙見山は、日蓮宗の霊場で、星辰(北極星)信仰の聖地としても知られており、多くの参詣者を集めています。

普段通勤で使っている路線。自宅や勤務先の最寄り駅をほんの少しだけ飛び越えて、終着駅を目指してみる休日。ほんの少しの非日常。私にとって、それを感じさせてくれるのが近場の終着駅。“プチ最果ての駅”に感謝です。

建物総合事業本部 志方 正紀