ある日、郵便箱を開けてみると分厚い便りが届いていました。涼やかな水色のシーリングスタンプが施された手紙は、その厚みの割には軽く、送り主も記入が無かったため、それが誰からのもので何が入っているのか、開けてみるまで全くの謎でした。
封蝋が施された招待状などをフィクションで見かけるときは、その封蝋に似合いのペーパーナイフがつきものです。我が家にも同田貫正国という名のある刀剣がモチーフとなったペーパーナイフがあるのですが、封筒の紙も分厚かったため、中のものを傷つけないよう気を付けながらハサミを入れてみると……封筒の隙間から、キャンバスの縁が覗いていました。
予想外の中身に胸を躍らせながらそっと手に取ってみると、手のひらサイズのキャンバスに鮮やかな夕空のグラデーションと建物と猫とのコントラストが美しい絵が。タイトルは、「逢魔が時を黄昏に変える猫」。そのタイトルと共に、絵と合わせた詩が綴られたカードが同封されていました。私の好きなモチーフと送り主である友人の美的センスが見事にかみ合った作品をひとしきりかみしめてから、そういえば少し前にサプライズで送りたいものがあると住所を尋ねられたことを思い出しました。すっかり忘れていたので、サプライズは大成功です。
大学時代に専攻していた中国語の授業で毎日のように顔を合わせていた彼女とは、卒業後、私が上京し物理的距離が離れてからのほうが仲が縮まったように思います。利発であり乙女でもあり、話題も興味も経歴もとにかく情報量の多い彼女との会話はほかの誰とするものともまた違ったもので、心地よく過ごせるとともにたくさんの刺激を受けられるかけがえのない友人です。私が大学在学中に下宿していたあたりに少し後になってから住み始めた彼女とは、共有している景色も多く、それでいて視点はやはり異なっていて、友人関係の象徴のようなものをもらって胸が熱くなりました。
絵の主題となっている猫は、彼女が私の部屋を訪れた際、猫だらけとの感想を漏らしたことを思い返させます。残念ながら部屋で猫を飼っているわけではないのですが、好きであることが当たり前すぎて自分でも気づかないうちに家の随所に猫のシルエットがあふれているためです。そのシルエットに今度は彼女の描いたものが加わることがうれしい限りです。
素敵なサプライズを届けてくれた友人の存在と、異なる場所や時間での思い出を共有できること、そして絵と詩を目で捉え味わえることに感謝です。
米軍・海外事業部 L.C.