父に感謝

3月、社会人になってから初めての父の誕生日がありました。

プレゼントとして、錫(すず)という熱の伝導性に優れ手になじみやすい金属でできたカップを贈りました。

昨年の父の日から誕生日に贈るものは何がよいか考え始め、秋ごろに決めたものをようやく寒さが残る春先に贈ることができました。駅や百貨店でお店を見るたび、花は日持ちがあるし、食べ物などの無くなってしまうものではなく、靴下ほど消耗しないものは…と考えを巡らせ、ふとテレビでいつか特集をしていた錫について思い出したのでした。

能作という、富山県にある大正5年創業の会社で、手で簡単に曲げられる錫でできたかごがとても印象的でした。会社名を覚えていなかったのですが、錫のカップで検索するとすぐにヒットし、ネット上での再会を果たすことができました。

錫は金や銀に次いで高価な金属であるようで、水が腐食しない、お酒の風味がまろやかになるなど、抗菌作用があるため酒器や茶器として古くより用いられていたそうです。結婚の25周年・50周年を祝う銀婚式や金婚式があるように、結婚10周年の節目を祝う錫婚式という風習もあるんだそうです。

父は仕事の関係上お酒を飲む機会が多いのですが、水も美味しく飲めるということがカップを贈る決め手となりました。何かの本で、プレゼントをプレゼントたらしめるのは包装だというのを読んだことがあります。新品でないものや手作りの物、モノがなんであったとしても、リボンをつけたりメッセージカードを添えるひと手間がただの物をギフトに変えるのだといった内容でした。通販サイトでは桐箱入りのものを選べ、メッセージ文を加えることもできたので、感謝の意を認めて誕生日の日付を指定して送ると、父の純粋に嬉しそうな声を聞くことができました。

こうして父の誕生日を祝うプレゼントを贈ることができたのも、100年以上前から今まで錫の商品を作り、その技術を受け継ぎ、父の手に届くまでに関わった多くの人々や、直接かかわる職人の方を支えている地域や家族といった環境、そして買い手である私が健やかに今まで過ごしていられる全ての理由といった諸々があって初めて可能になるということに思いを馳せると、今現在に至るまでの時と空間の折り重なりの壮大さに圧倒されるような心持になります。そんなすべてに感謝の思いを馳せる時間を持つことを大切にしていきたいと思います。

米軍・海外事業部 L.C.