音樂。人生。
台湾留学中に訪れた大港開唱という音楽フェスティバルの会場の入り口やステージでは、“人生の音楽祭”というテーマを示すその文字がどっしりと構えていました。
音楽は、水や食料と違い生命活動の維持に必要なものではありませんが、学生の頃にコーラスの授業で先生が生徒へ音楽の定義を募ったとき、音楽とは、魂が栄養を得るための食糧だとの意味を込めて“Food for soul”という定義をつけた人がいました。音楽が無くては生きていけない、ことは無いのかもしれませんが、ライブという言葉の通り、生の音楽を目の当たりにすると、強く生を意識させられます。命の糧をもらえるような気がするのです。
台湾のフェスでも、故郷の沖縄でも、大学在学中にも見た大好きなバンドのライブへ、先日久しぶりに行くことができました。そのバンドのメジャーデビュー日は偶然にも私の誕生日の翌日で、初めてそのバンドのライブへ行ったのも5年前の同じ日でした。休止期間を経てのおよそ2年ぶりのライブで、チケットが当たった日から待ち遠しくしていました。当日会場へたどり着くと、タオルやTシャツなどのグッズに身をまとった人たちが溢れ、そんなライブ前の光景を目にするだけでも懐かしく胸がいっぱいになりました。
ライブを有観客で行う事や声を出すことが当たり前でなくなっても、ライブは生き続けています。コロナの流行以降、配信のライブであっても会場にいるのと同じくらい楽しむことが上手くなった気がしますが、配信には配信の良さがあるように、現地での有観客ライブには何物にも代えがたいものがあります。1年以上の間をあけた後のライブの感動はひとしおで、声が出せなくても同じ空間でひとつの音楽を共有していること、大好きなアーティストが変わらず音を奏でてくれていることを目の当たりにして涙がこらえきれませんでした。
終演後、これが初めてのライブだったという人の話を聞き、声を出すライブに行ったことがないという事実に衝撃を受けました。同じ音楽を聴きに来たという、ただ一点だけの強いつながりを持つ人々の声が会場をこだまする感覚や、MC中の何気ない掛け合いも、終わりが近づいた時の惜しむ声や曲の始まりに思わず出てしまう歓声も、声が出せない分だけ拍手が表情豊かになったとはいえ、それら全てが戻ってくる日が待ち遠しいなと思います。
誕生日やクリスマスよりも、指折り数えて楽しみにするようなライブ。気づけばリピート再生してしまっている、お気に入りのアーティストの新曲。メロディを聞くだけで、故郷や家族、訪れた場所や景色、それぞれの思い出を彩った心情を思い出させてくれる歌。
音楽のおかげで、穏やかに眠りにつけたり、起き上がるのが少し楽になったり、やる気を出せて作業が捗ったり。人生の様々な局面で私を支えてくれる音楽に感謝です。
米軍・海外事業部 L.C.