私が富士山を見ることができるようになったのは、就職のために上京してからでした。
今までは富士山が見える地域に住んでいなかったので、日常の中で富士山が見える瞬間があると気が付いた時には興奮しました。飛行機の窓から富士山の隆起が見えるのも心躍りますが、遠くから浮かび上がるような富士山も幻想的です。
ある日埼玉県に出かけた際、綺麗な夕焼け空を眺めていると、とてもきれいな形をした山が見えました。しばらくはなんの気なしに見ていたのですが、もしやと気づき地図で方角を確かめるとそれは富士山で、こんな遠くからでも見えるのかと驚いたのを覚えています。
横田基地方面へ向かう電車の中でも、運がよければ富士山が見えることがあります。そのために、天気のいい日はなるべく富士山が見える方の車窓を向いて電車に乗るようになりました。人がたくさん乗っていると車窓を眺めることが難しい時もありますが、隙間から少し富士山が見えるだけでも心躍り、ラッキーだなと嬉しい思いで一日を迎えることができます。
横田基地内でも天気がよければ富士山がよく見えます。最初の頃はやはり、そもそも見えるという可能性が頭に入っておらず、教えていただいて初めて見ることができました。障害物の少ない景色の中の富士山は、住宅街の隙間から見えるものよりもなんだか大きく見えて、その景色を初めて見たときは思わず飛び上がってしまったのを覚えています。
昨年は米軍・海外事業部のお仕事で富士山のふもとにある米軍施設に足を運ぶ機会に恵まれました。最初は天気に恵まれず、曇っているとこんなに近くても見えないのだと驚きました。天気が晴れるとその姿は圧巻で、見慣れない私だけでなく周囲の人も皆一様にカメラを構えてしまうほどでした。帰りの高速道路では夕日に照らされた富士山を見ることができました。
上司に教えていただいたことですが、夏は男富士、雪化粧をした冬は女富士と言うそうです。これに関連して、海外の言語には名詞が男性名詞、女性名詞と分かれているものもあり、これによって冠詞(英語の”the”等に該当する言葉)が変わります。例えばフランス語で月は女性で、”la lune”と書きますが、太陽は男性で、”le soleil”と書きます。女性名詞には”la”、男性名詞には”le”をつけるといった分け方になります。日本語には名詞ごとに明確な区別はないものの、「雪化粧」のような女性を連想させる表現があるほかに、富士山の場合はひとつの山が季節によってそれぞれ男性と女性になぞらえられているのがとても興味深いなと思いました。
百聞は一見に如かずの言葉通り、小さい頃は教科書で学ぶ程度だった富士山も、実際に見ると自分でも驚くほど喜ばしい気持ちになることがわかりました。貴重な機会をくれたお仕事、そして富士山について教えてくださった上司の方々に感謝です。
米軍・海外事業部 L.C