国立新美術館  アメリカン・ポップ・アート展

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 田辺聖子著『文車(ふぐるま)日記』のあとがきに、次の一文があります。

 “ 人生を生きるのに、愛するもの、好きなことを一つでも多く増やすのは、
たいへん、たのしい重要なことですから・・・ ”

とくに“たのしい重要なこと”という一節が好きです。
そのお陰で? 2年前からは、絵画の鑑賞が“好きなこと”に加わり、
先日も、乃木坂(六本木)にある国立新美術館(アメリカン・ポップ・アート展)
に行ってきました。

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「ポップ・アート」の「ポップ」は、英語の“popular”(大衆)から
きていて、主題は日常生活であり、伝統や生活習慣にルーツを持つもの、
大衆によって愛されるものです。

 1960年頃と言えば、ビートルズ、エルヴィス・プレスリーの歌、
マリリン・モンロー、ジェームス・ディーンの映画、
1963年のジョン・F・ケネディの暗殺、1964年ベトナム戦争勃発 等々
 さらには、ホット・ドッグ、コカコーラ、革ジャケット、
プレイボーイ(雑誌名) などがこの時代を象徴した出来事です。

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(左:カーター大統領、右:アンディ・ウォーホル)

 画家:アンディ・ウォーホル(1930~1987年)の《マリリン》シリーズは、
モンローの死後に制作されたもので、見る側(私たち)に、
その「マスク」で彼女を見分け、つややかな髪、明るい瞳、
官能的な唇を、模倣することを求めています。

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ピカソが20世紀前半を代表するアーティストだとすれば、
20世紀後半を代表するのがウォーホルだといわれています。
もっとも、ウォーホル自身は“商業美術で成功した自信”によって
純粋美術(マチス、ルノアール等)でも成功しようという野望と
冷静な計算がありました。

ですから、その画材は誰でも知っているもの
(マリリンモンロー、毛沢東、キャンベルスープ缶 等々)
でなければ成り立たないのです。

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 (100Cans:1962年)

キャンベル・スープ缶の絵が、ポップ・アートの始まりを告げたといわれています。
一見どれも同じように見えながら、トマトスープ、チキンヌードル、
クラムチャウダー、アスパラガス・クリームなど種類が違います。

 画商でインテリア・デザイナーのミリュエル・レイトにアイデアを求め、
1961年にキャンベル・スープ缶のアイデアを50ドルで買ったと言われています。
今のお金で換算すると三十万円位?でしょうか。

 アメリカン・ポップ・アートは、1950年代までのヨーロッパの影響
(印象派の絵画等)に対して新たに得た自信から生まれ出たもので、
最初の推進力はアメリカ精神そのものであり、
ハリウッドとニューヨークでブームを迎えたのは必然とも言えます。

 この日は、南 雄介(国立新美術館副館長・本展監修者)氏の
講演も拝聴できました。 写真をベースに作成したことや、
型枠を使って上からスプレーで吹き付けて作っていることなど
興味深い話がありました。

 リキテンシュタインの「鏡の中の少女」(No.20の絵)、
オルデンバーグの「ジャイアント・ソフト・ダラムセット」(No.12の絵)、
ウェッセルマンの「グレート・アメリカン・ヌード」(No.23の絵)など、
とても印象的でした。

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 家に帰って、エルヴィス・プレスリーの曲: ハートブレイク・ホテル、
ブルー・スウェード・シューズ、監獄ロック、ラヴ・ミー・テンダー、
ドント 等々の曲を聴きました。

昔は、ロックはうるさいという感じでしたが、
今聴くととてもやさしい感じがします。 ミュージシャンのROLLYさんが、
シャンソンの祭典「パリ祭」に出演して、「ロックの人がなぜシャンソンを?」
と聞かれ、僕にとっては「そこにないことをやる」のがロックなんです
と答えています。1960年代というのもそんな時代だったのかもしれません。

取締役 管理本部副本部長 大隅 晃