人生で初めて「竹の子狩り」をすることになった。
私は、年に一度は竹の子を食べなければ気がすまない性分で、前職を退職し関西に戻ってからは春にはスクーターで丹波篠山まで出向き、収穫したての竹の子を求めに行っております。現地ではスクーターのシート下およびリアボックスに積めるだけの竹の子を購入し、そして日々お世話になっている、知人・ご近所にと御礼をかねてお届けするようにしております。
なぜスクーターで行くのかは、竹の子は現地で求めると非常に安く手に入るため、車で行くとついつい大量に買ってしまうので、積載制限のあるスクーターで行くことにより自己制御していることにほかなりません。
今回の竹の子狩りは、岡山にご親戚を持つ高校時代の友人夫婦がコロナ禍の影響で2019年以降竹の子狩りに出向くことができず、今年やっと岡山のご親戚からお声がかかったそうです。いつもは姉妹で岡山に出向いていたのですが、妹夫妻は4月に予定があり都合がつかないため私共に声かけをしてくださったものです。
私自身、竹の子が地面から穂先をだしている状況は、以前暮らしていた川崎市の鷺沼で毎春見ていたのですが、ひとの土地・ひとの山で勝手に竹の子を掘り出すことができず、いつかは竹の子狩りをしてみたいと思っておりました。またとないチャンスです。早速4月の勤務シフト希望に「お休み 岡山竹の子 と記載」してお願いさせていただき、無事お休みを頂くことができました。(ありがとうございます)
当日は、現地9時集合とのご指示のため、6時出発で友人宅にお迎えに行きます。岡山の目的地までは約160Kmですが、ゴールデンウイーク初日のため渋滞も予想しての出発時間設定でした。
予想通り神戸から姫路までの間はかなりの渋滞でしたが、集合時間の30分前に現地に到着しました。
待ち合わせ場所に、おじ様夫婦は愛車の軽トラックでさっそうと現れます。
おじ様は82歳とお伺いしておりましたがあまり年齢を感じさせない風貌のご夫婦でした。
早々山へと入り竹の子狩りの始まりです。まずはコーヒーを入れて頂きそれを頂いている最中に、竹の子掘りの方法を実演してお教えくださいます。はた目で見ていると、穂先の向きと垂直となる両脇の土を掘り起こし、竹の子の本体が現れたところで、一気にクワを根元に差し入れるとのことで、いとも簡単に竹の子を収穫します。コーヒーを飲み終え竹の子掘りの開始です。
いざ自分で行ってみると、まず両脇の土が掘り起こせない、やっとの思いで掘り起こせたもののクワを竹の子の根元に差し入れることができず悪戦苦闘をしながら初回の1時間で3本の竹の子を収穫するのがやっとのことでした。休憩のあと たけのこ狩りに向かおうとする私のクワをみたおじ様は「そのクワは平鍬と言い土をならしたりする道具で誰かがここに持ってきたもの」「それでは竹の子は掘れんだろう」といわれます。道理で土を掘り起こそうにも地面に広がる植物の根っこを断ち切ることも叶わず、あげくの果てはクワの刃先が「ぐにゃりと」曲がり、それを足で踏んで曲がりを修正するという作業を幾度も繰り返し行っていたことを話すと「これが竹の子用のクワだ」と言い、細い先と平たい先の双方がついたツルハシのような鋳造の道具をお貸しくださいました。
そのクワで竹の子掘りを行うと、何のことはなくいとも簡単に土を掘り起こすことができます。後半戦の1時間30分で10本の竹の子を掘ることができ、そのうち「今日一番の竹の子」も収穫することができました。作業に適した道具の選択はつくづく重要だと実感いたしました。
その後、おじ様の奥様がご準備してくださった昼食の時間です。
岡山の郷土料理の「祭りすし」の他、「先日収穫した竹の子で作った肉巻き」等数々のお料理でもてなしてくださいました。おじ様は以前東京で会社勤めをしておられ、定年を機に地元の岡山に戻り、畑を借りトウモロコシ、エンドウ豆、サトイモの他 日々の野菜を育て、また山を借りて柿の栽培など農作業を主とした悠々自適かつ健康的な日々を過ごされているそうです。
そこでこの度の主役の竹の子についてお伺いしたところ、勝手に生えているのだと言われます。
また、現在栽培されている作物ならびに加工した品は 各イベントがあった際には提供するそうで、立派な地域のボランティア活動ですねと私が言うと「いや 売る」と返す、気さくなおじ様でした。
私ども夫婦の両親はすでに他界し
寄る年波に親戚とは疎遠になりつつある昨今
高校時代の友人夫婦と その親戚とのお付き合いを肌で感じ
ほほえましく また うらやましくも感じました。
岡山のおじ様ご夫妻に感謝申し上げます。
建物総合事業本部 大阪支店 田中 裕士