車窓からお花見

その日は朝から気持ちのいい晴天でした。

御年90歳の母親を車に乗せ病院へ行った帰り、まっすぐに家へ帰らず近くの公園へほんの少しドライブをしました。さすがにいつも通りの帰路ではないことに気づいて戸惑っている母に

「車からやけど、ごめんな」

お花が好きな母親ですが、足腰が悪く満足に歩くことも日光を浴びることも出来ずに部屋にこもっていたので秘かに私なりに計画していました。仕事帰りに見る公園の桜があまりにもきれいだったと家で話をすると、何となく悲しそうな表情をしていたのでお花見をさせてやりたいと、病院帰りに公園わきの側道に車を停めたのです。交通量の多い道路なのであまり長くは停まっていられないので、ほんの1,2分だったと思います。

後部座席のウインドウを開けると爽やかな一陣の風が車内に吹き込んできました。

母「・・・」

私「見てみ、ほら、なぁ、きれいやろぉ」

バックミラーに映る母親の表情が柔らかくなりました。

出来れば車椅子でゆっくり花見をさせてやりたいのですが、どうも母親は車椅子にやや抵抗感があるようです。

どんな形であれ、来年もまたお花見をさせてやりたいと強く思いました。

お母さん、ありがとう。

  建物総合事業本部 大阪支店 Y.M