エイト社員ブログ「『阿吽』の呼吸」

ふつう「阿吽」の呼吸と言えば、
慣れ親しんだ間柄でお互いの意思疎通が言葉を介さなくても成立し、
行動が連携するような状況のことを指す言語であると認識しております。
が…先日ある講習会に参加する為に
都内まで行った帰りの電車の中でその出来事は起こりました。

まだ17時をちょっと回ったくらいの時間でしたので
電車内はさほど混んではおらず立っている人もまばらな状況で、
私は進行方向左側の扉の横に立っておりました。
その隣?の椅子の端側には50代くらいと思える女性が
大き目の荷物を幾つか持ち座っていました。

ある駅に到着し、私が立っている扉とは反対側の扉が開くと、
私の背面でその女性が慌ただしく動き始めました。
ふつうは駅到着寸前くらいで降車準備をするものだと思いますが、
その女性は失念をしていたのか扉が開いてから慌てて降りようとしておりました。
私も何となく気になり女性の動作を横目で追っていると、
何とか降りるのは間に合いそうな雰囲気でしたが…!!
明らかにその女性の物であると思われる荷物が
網棚の上に置き忘れられている事に気が付きました。
アッと思い女性を見ると、その女性はホームの上で忘れ物に気が付いたのか、
こちらを振り返っておりました。
私は咄嗟に荷物を掴み、放り投げて渡してあげようかと思ったのですが、
私と女性にはちょっと距離があり(汗)躊躇していたその瞬間、
扉の横に立っていた男性と目が合う、
すると彼は私に投げろと言わんばかりに両手を広げた。
私の投げた荷物は彼の手でしっかりと受け止められ、
閉まりかけた扉に引っかかりながらも持ち主である女性の手に渡たす事ができた。

動きだした電車の中で私と彼は微笑みながら軽く会釈を交わした。
名前も年齢も何も知らない者同士でも瞬間的に目的が一致した事で
「阿吽」の呼吸が実現した喜びを感じ、
ちょっと幸せな気持ちになりながら家路につくことができた。
ありがとう。

田中 大輔